移動運用アンテナ
  前編ではエレメントを製作しました.今月はローディング・コイルの製作,調整,基台の製作を行います.
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コイルに使う銅線の処理 写真 1

ローディング・コイルに使う銅線は購入時の巻癖があるので,コイルとして仕上げる予定の

φ85mmになるように巻癖を付けます.

巻癖はすぐには直りません,太さにもよりますが1日〜2日かかります.

購入した銅線を全部ほどいて,どこか広いところに出て一直線にします.途中で撚れたり

してキンクしないように注意してください.

直線になったら,乾いた雑巾またはウエスで銅線を端から端までを軽くしごいて凸凹を取り除き,なるべくまっすぐにします.

直線になったらループにしないでその場に置き,写真1のように筒に巻き付けます.

コイル状の巻き癖をつけるために,銅線を外径φ80mmぐらいの塩ビ・パイプや茶筒などに巻き付けて,1日は寝かせておきます.

コイルを巻く 写真 2

@ 銅線を筒に固定してから1〜2日経過した後に作業を進めます.

A 手元にスペーサと防水筒,上下ふたを置きます.

B 巻癖の筒からコイル線を外します.片方のテープゆっくり取り外すと自然に緩みます.

C コイルの巻き方は,まず巻癖のついたコイル線をまとめて持ち(写真2),

 スペーサのピッチ穴にコイル線を通します.順送りにスペーサを円に沿って送り込みます.

 いきなり,全部を巻くと,コイルが円錐形になるので,5〜6ターン巻くごとに防水筒に挿入して,形を補正しながら作業を進めてください.

 このとき,コイルを持った手は絶対に放さないでください.目標の巻数になったら端末処理をします。

 1回余分に巻いて銅線の両端をスペーサーに通し、数センチの余裕を残して銅線を切ります.

D 形を整えて防水筒に入れます.スペーサの外側が,防水筒の内側にぴったり張り付くように形状を整えます.

 この時点では,のり付けは行いませんが,最終的にはアクリル接着剤で固定します.

E どこにものり付けせず,すべてを組み立てて,不具合の有無を調べます.

 すべて問題がなければ,(一部分だけのり付けして)コイルの組み立て作業をいったん終わりましょう。 ( 写真 3 )

 この後,アンテナ・エレメントと結合し,全体のカット・アンド・トライの調整が終わってからのりづけを行ないます。

F 仮組み立したとき,防水筒の上下中央にコイルを収め,軸芯の下端から65mmの 位置に下側ふたの面がくるように合わせます.

写真 3

 下側ふたを抜いたとき,その内側のリングが下端から68mmにします.

 位置が確定したら内側のリングだけをのり付けして固定します.

 エスロンをつけてリングを回転させながら,位置がずれないよう固定してください.

G 次に,上ふたの端子穴を空けます.位置決めのポイントは,スペーサに接触しないで,

 筒の内側から中心に向かって15mmの位置に印をつけ,φ3.2mmの穴をあけます.

 次に,下ふたも同じ要領で4か所の端子穴をあけます.

 4か所の左右の間隔は20mmにします。

  ローディグコイル編 はこちら → 
H 筒からコイルを少し抜き出し,コイル線の上下端に圧着端子を付けます.巻始めは

 上ふたの端子穴に合わせ,スペーサから最短の位置に圧着端子を付けます.

 圧着端子はねじ止めでスプリング・ワッシャを入れて上ふたの穴に差し込み,上ふたの

 外側からナットで止めます.

 巻き終わり端は,全体の巻数が設計値より1ターン余分の位置に圧着端子を付け,

 下ふたの穴に差し込みナットで止めます.

 ポールの上エレメントが3mより短いときは,短い分の長さをコイルの巻数で補填

写真 4
 するので,さらに1〜2ターン余分に巻いてください.

I コイル下ふたのナット止めの先に6角スペーサを取り付けて,下部エレメントからの

 バナナ・プラグを差し込むジョイントに使います.

 6角スペーサの端子側はそのままねじ込みますが,

バナナ・プラグ側はφ4mmの穴に広げます.

 スペーサをバイスに挟んで,電動ドリルでφ4.0mm穴を深さ20mmまであけ広げます.

          コイルの外観 ( 横から見たところ 左端が上部 ) 写真 5



J 巻始めの端子には,先端にバナナ・プラグをつけた10〜15cmリード線を付けます.

K 中間タップの作業は最終段階で行うので,今は行いません.

 どこにものりづけをしないで仮組み立てをします.

 このような状態でも,コイルはしっかりと固定しているはずです.

 仮組みしたコイルは写真3,写真4,写真5のようになります.

 ここまでで,コイルの第一段階を終わり,調整作業のときに残りの作業をします.


  写真 6 はコイルの外観 (下部から見たところ)
車のルーフにアンテナを取り付ける

写真 7
ローディング・コイルは仮組立のまま上下のエレメントと結合して,調整に取り掛かります.

 まず,車にアンテナを取り付けるベースと,ボディー・アースを準備します.

車にルーフ・キャリーと横バーがある車での取り付け方の手順を説明します.

アンテナの取り付けには足場パイプ用の自在金具を使用します.

 まず,写真7にあるような倒立可能な足場用自在金具を選んで,ルーフ・キャリーの横バーに

しっかりと取り付けます.

この金具は,立ち上げたらすぐに倒れるので,転倒防止策として下部エレメントとコイルの

結合部分にφ4mm程度,2mぐらいのクレモナ・ロープを取り付け,車のどこかに結びつけて

ステーにします.

転倒防止の安全が確認できたら,アンテナ本体を取り付けて倒立を確認します.

 次にアースの準備です.アース線の長さは50cm以内でボディーのどこかにねじ止めします.

私はこれをDC的アースと定義しています.

高周波的アースをとる

写真 8
DC的アースがとれない場合には,高周波的アースを取ることにします.0.2mm程度の薄い銅板を

180mm×70mmの大きさに切り,150〜300mmの網線をはんだ付けし,網線の先端はアンテナ

基台の同軸コネクタに締め付けます.銅板は,荷造り用テープでルーフに貼り付けます.

高周波アースの例を写真7に示します.

長いアンテナは雷が怖いので,アンテナ・ベースにはDC的アース取っています.

SWRの測定器

写真 9
今回のアンテナの調整には,以前から使っている潟Nラニシ製のBR-510Dを使って計測,

調整を行いました(写真9).

 アンテナ・ベースから約4mの5D-2Vで車内に引き込みM接線を取り付けます,

これをBR-510Dに接続し,測定器本体もボディにアースをつなぎ、計測します.

 コイルの調整とアースの取り具合によって調整結果は大きく変化するので,

アースの取り方を決定したら,変更しないでください.

アンテナのマッチング
理論的な半波長のホイップ・アンテナの放射抵抗は数Ωと言われ,相当低い値です.

実際にはアースの長さも含めて給電点の抵抗値(インピーダンス)は変化します.

このアンテナの放射抵抗値と50Ω系同軸ケーブルとの整合(マッチング)を取るために,

図1のようなトロイダル・コイルのトランスを製作します.

はじめにφ1mmのエナメル線をバイファイラ巻に14ターンします.

巻き始点とペアになっている線の終点をジョイントしてグラウンドにし,一方を

送信機側の同軸ケーブルを接続し,他方を2/3位巻数を減らしてアンテナに

つなぎます.

このトランスをアンテナ基台に小さなアルミの箱を付けてその中に収納します.

 このままアンテナに取り付けて,調整は後ほどローディング・コイルの調整が

終わってから,さらにSWRを下げるように巻数を1〜2ターンの範囲内で

調整します.

ローディング・コイルの調整
( タップの切り替え )
調整は,コイルの全巻数を確定することから始めます.まずは3.5MHz帯からです.

スペーサを目安にして,1/6ターンずつ切り詰めて,追い込んでいきます.

スペーサ一の間隔分(1/6ターン)で約10kHzぐらい中心周波数がずれていきます.

図2にタップ位置の目安を示すので参考にしてください.

 3.5MHz帯では,アンテナ長が1/16λしかないので,帯域幅が30kHzほどしかとれません.

そこで,ワンターンの半分の所にショート・タップを付けることにしました.

この作業は何度も付けたり外したり,繰り返し計測しながら巻数を追い込んでいきます.

 全長が決まったあと,7MHzのショート・バーの位置決めを行います.

小さなワニ口クリップに,コイルと同じ銅線を10cm長はんだ付けし,コイル内側で7MHzの端子に

接続します.

注意しながら,巻始めから1/3程度の所を1か所,コイルの軸方向に凹ませます.

これにワニ口クリップをくわえさせて,コイルを防水ケースに納めます.

何度も繰り返すとコイルの形が崩れるので,その都度円形に補正してください.

タップの位置が決まったら,ワニ口クリップを外してその位置にはんだ付けしますが,接着面が大きく

なるように銅線を折り曲げ,なおかつ,リード線が自然にタップ位置に向かうようにして,その後,

はんだ付けをしてください.

ここ以外,コイル内の端子はすべて圧着ラグでねじ止めになります,緩み止めのため,

ダブルナットにします.貫通したねじの先は,そのまま端子になります.

巻始めの端子には10〜15cmリード線で,その先にはバナナ・プラグがついていますが,のり付け後でも微調整は可能です.

 コイルの収納時に,スペーサが歪んでいないか,コイルの形は正常化などチェックして最終の測定をします.

 ローディング・コイルのピッチが狭いので,巻き線が隣り合う線とタッチしないよう確認してください.

 問題がなければ,防水筒にのり付けしてコイルを固定します.

コイルのり付けの手順
まず下ふたの軸芯を固定します.下ふたの外側に押さえのリング密着してエスロンで接着します.固まるまで30分ぐらい待ってください.

 次に,アクリル接着剤を用意し,注射器のような注入小瓶に入れます.防水筒を下蓋に密着させながらスペーサが歪みなく下ふたに

密着するようにします.この状態で防水筒を左手でしっかりと持ち,右手で接着剤を注入します.

 注入は下ふたと筒が接合するところから始めます,まず1〜2滴で,円周を走るように接着していきます.

次に,スペーサの上部から注入します.1〜2分で固まります.ここで手を放してもOKです.

最後に上ふたの内側リングを上ふたと接する位置にエスロンでのり付けをします.乾くのを待って,上ふたを軸に入れます.

アクリル接着剤を円周に沿って注入します.最後に外側の押さえリングを上蓋と密着するように エスロンでのり付けをします.

コイルと接続するアルミ・パイプが抜けないように,外側の塩ビ・パイプがスクリューねじ2本で抜け止めをします.

これででき上がりですが,最後に測定をします.

計測結果

( 7MHz帯のSWR特性 )


(3.5MHz帯のSWR特性 )
記録した数値は,上図のグラフのようになりました.

周波数値とそのときのSWRの数値読み取って記録します.バンド内で5〜6か所はチェックしてください.
足場用自在金具で基台を作る
私のマイカーにはルーフ・キャリー・バーがあります.ひ弱な感じがしたのでこれに少し手を加えてキャリー・バーを補強し(写真10),

アンテナのルーフ・ベースにしています.

 アンテナの基礎となる構造物ですから,十分な強度を維持しながらも,手作り工作が容易な材料を求めました.

錆びない,加工しやすいことから,ほとんどの部材はアルミにしました.



写真 10
主な部品は,アンテナ・ポールを着脱固定させる足場用自在金具,倒立をさせる「蝶番」,

強度的に5mm厚のアルミ板とLアングルなどです.

 アンテナ・ポールをルーフ・キャリーの横バーに直接取り付ける自在金具は,

ホームセンターで足場用単管を結合する自在金具を見つけました.

 アルミ板やアングルはDIYホビー用の30センチ定型の部材を購入したので,Lアングルを



写真 11
数回切断した程度で,ほとんどは穴あけ作業でした.

5mm厚が入手できなかったので,3mm厚と2mm厚を重ねて使用しました.

腐心したのは倒立の機能です.大型ドアー用の蝶番を2個使ったので,

倒立は大変スムーズになりました.立てたときに左右に倒れる心配はまったくありません.

写真11,写真12,写真13にこの基台の全体を示します.

 これまで4年あまり使ってきましたが,長時間風にあおられて止めねじが緩み,転倒防止のロックが外れて転倒してしまったことが数回

あったので,ロックの改良を行いました.

これまでは,蝶ねじで押さえる方式でしたが,貫通して縫い合わせで,ねじ止めをするように改良しました.

 このアンテナ・ベースの良かった点は,5メートル長の釣り竿アンテナでは,まったくステーをとらなくても転倒しないし,

倒立も手軽にできます. 移動地に着いて1〜2分で運用ができるほど,機動性が高くなっています.



写真 12


写真 13
使用後の雑感
 塩ビのポールは案外しなやかで折れる心配はありませんが,風速10〜15mもの強風では,下部エレメントが柳の木ように揺れます.

ローディング・コイルが,半径30〜50cmほど空中で円を描くように踊ります.

 もう少し太いものに変えようとも思っていますが,太いと重くなるので,何か良い部材がないものかと思案しています.

 その後、25mmφのアルミパイプに取り替えることで、しっかりするものになりました。

 3.5MHzではCWからSSBにタップを付け替えるのが面倒なので,下部エレメントとコイルの接続するケーブルを20cm延長して

SSBのタップにつないで使っています.バンドの端のほうは使えませんが辛抱しています.

 10MHz帯は別のアンテナを使っていますが,このアンテナでカバーするようにしたいと欲を出しています.

トロイダル・コアは2〜10MHzを使っていますが,何か良いものを見つけて実験してみようと思っています.

 手軽にHFローバンドが楽しまれ,手放したくないアンテナでいつも使っています.

これができてからはモービルアンテナは悩まなくなりました.

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